収容所新聞『トクシマ・アンツァイガー』中の肉屋の広告

川上三郎、2006/03/25.

ドイツ語



 徳島俘虜収容所では、オットー・ハナスキーが肉屋を開業していました。もちろん肉屋といっても単なる小売りではなく、屠殺からソーセージの製造販売まで行うものです。収容所内で発行の週刊新聞『トクシマ・アンツァイガー(徳島新報)』には、その広告がいくつか掲載されています。ここにその広告の画像すべてを、ドイツ語版と日本語版でお見せします。ついでに関係記事からの抜粋を2つほど掲載しておきます。これを読むと、開業してから10ヶ月程して個人経営でなくなるようなのですが、その理由は今のところ不明です。


---- 1915年11月7日(第2巻第7号) ----

   開店

 以前から多くの方々が、収容所内で出来たてのソーセージを食べたいと願っておられました。このご要望にお応えすべく、ソーセージの製造を引き受ける決心をいたしました。11月12日の金曜日についてのおすすめは次のとおりです。
ウィンナー 1対 7銭
豚足塩漬け 1個 15銭
ゆでたメットヴルスト ポンド 40銭
ブラウンシュヴァイガー  ポンド 40銭
 注文は月曜日夜までにお願い致します。おそらくこれほど少ない資本で開店した店は、いまだかつて無いでありましょう。数多くの注文によって支援いただけますよう、お願いいたします。
 炊事部から出されていたソーセージは、私の製造になるものでありました。もしこのソーセージについて何かお気に召さない点があるようでしたら、喜んでお得意様のお好みに合わせる所存でございます。
 どうぞよろしくお願い申し上げます。
          オットー・ハナスキー

---- 第2巻第8号(1915年11月14日) ----

 来週のおすすめ

ブラウンシュヴァイガー 1 ポンド - .40 円
メットヴルスト 1 ポンド - .40 円
アイスバイン(塩漬けしてゆでたもの) 1 ポンド - .25 円
コトレットのアスピック 1 ポンド - .15 円
 注文は月曜日夜までによろしくお願い申し上げます。
            オットー・ハナスキー

---- 第2巻第9号(1915年11月21日) ----

   毎日できたてソーセージ

メットヴルスト、ブラウンシュヴァイガー、ウィンナーおよび
焼きソーセージを毎日出来たてでご提供
              O. ハナスキー

---- 第2巻第10号(1915年11月28日) ----


  来週のおすすめ

 極上ウィンナーソーセージ 7銭
 極上ガーリックソーセージ 35銭
よろしくお願い申し上げます。
            オットー・ハナスキー

---- 第2巻第11号(1915年12月5日) ----


   本日のおすすめ

 極上モルタデラ      1ポンド -.40
 極上ガーリックソーセージ 1ポンド -.35
 極上ウィンナー      1対   -.07

             オットー・ハナスキー

---- 第2巻第16号(1916年1月16日) ----


  徳島で初のヨーロッパ風肉屋

来週のおすすめ

極上サラミ 50銭
極上メットヴルスト(ゆでたもの) 35銭
極上ガーリックソーセージ 35銭
極上ブラウンシュヴァイガー 40銭
極上モルタデラ 40銭
     よろしくお願い申し上げます。
         オットー・ハナスキー



---- 第2巻第20号(1916年2月16日) ----


  ハナスキー肉店のおすすめ

レバーソーセージ、ブラッドソーセージ、メットヴルスト、
ガーリックソーセージ、モルタデラ、
鰊の酢漬け、焼き鰊。
その他、前もって注文いただく商品:
「ペベコ」歯磨き チューブ入り 60銭


広告以外の関係記事

---- 第2巻第11号(1915年12月5日) ----

  「養豚」

このところ収容所は、というより正確に言うならば収容所農業部門の家畜は、新たにその数を増やしていて、非常に喜ばしいことである。

(中略)

収容所の肉屋にしてソーセージ製造所はこれまで何度もその能力の高さを見せつけてきたのだが、ここもますますその規模を拡大している。木曜日には仔牛が連れてこられて、残りわずかばかりとなった日々を暮らすために豚といっしょの場所に入れられた。

(以下略)


---- 第3巻第15号(1916年8月20日) ----

  「収容所の物見から」

(略)

収容所の肉屋は、いまや私企業から公益施設へと生まれ変わった。もちろん誰しも期待しているのは、より少ないお金でソーセージがもっと買えることである。

(以下略)


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